仕事

熊本IBD会長・中山泰男さん

IBD患者さんにとって「就労」は大きな課題の1つといえます。自身がクローン病患者でもあり、長年IBD患者さんの就労支援に取り組んできた熊本IBD会長の中山泰男さんに、「就労に対する考え方」についてアドバイスをいただきました。

IBDについて

IBDとは、炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease)のことで、 一般的にはクローン病(Crohn's Disease)と潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis)のことを指します。
IBDは、若年層での発症者が多いことが特徴です。未成年の場合、下腹部の鈍痛や体力減退などIBDに特徴的な症状をうまく説明できないことや、痔ろうなどの肛門部異常については、恥ずかしさから受診するまでに時間がかかり、治療が遅れるといった傾向があります。また、成人の場合は、仕事に追われて病院受診が後回しとなり、いよいよ我慢できなくなって重症化して発見されるといったケースが後を絶ちません。

現在、IBDは原因不明で根治療法がなく、国の「難病の患者に対する医療等に関する法律」(以下、「難病法」という。)に定められた指定難病に指定されています。
ただ、私たちIBD患者は、難病全体から見た場合、意思決定能力や日常生活動作(自立歩行や運転動作など)に問題はなく、IBDの疾患そのもので死ぬことはありません。比較的、自己管理がしやすい疾患だと認識されています。
過去においては、保存療法や外科的処置による対処療法しかありませんでしたが、2000年以降に登場した生物学的製剤等によって、寛解期を維持させる予防的な治療へと様変わりし、生活環境は改善されました。

IBD患者さんと「就労」

IBD患者さんと「就労」
さて、IBD患者の就労問題の1つに、「病気の事実を公表すべきか内緒とすべきか」という問題があります。患者の心理としては、就職に不利な状況にはしたくないと思うのは無理からぬことです。自己管理ができていて調子が良い状態なら、わざわざ公表しなくても良いでしょう。ただし、労働環境はときに過酷なこともあります。就職してみると求人内容と全く違う場合や、ノルマ達成にがんばり過ぎて症状が再燃することも珍しくはありません。病気を公表せずに働いている患者の多くが不安からストレスを強く感じているという調査結果も出ています。就職することはとても大事ですが、長く働き続けられる環境を手にすることは、もっと重要な視点だと考えます。
次に、ハローワークの利用の仕方ですが、一般窓口と障害者窓口があり、病気を公表しての面接を希望するかどうかを決断しなければなりません。開示した場合には、企業側に病気の状態を伝えた上で、面接日時を決定してくれます。
次に、面接時には、病気の説明より、自分の長所を売り込むことが重要です。最後に、会社側へは、合理的配慮を申し出ることを忘れてはなりません。例としては、「トイレへ頻繁に行く」「調子が悪い時は残業を免除してほしい」「通院日は休みをいただきたい」などが該当します。会社側の条件と自分自身の希望との折り合いをつけることが肝心です。患者自身も病気を理由に、合理的配慮を権利獲得と勘違いしてはいけません。チームワークを大事にしましょう。

※独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター:難病の症状の程度に応じた就労困難性の実態及び就労支援のあり方に関する研究(www.nivr.jeed.or.jp/download/houkoku/houkoku126.pdf)(2017年4月5日アクセス)

就労に対するアドバイス

就労に対するアドバイス
仕事は無理してすがり付くより、面接で落ちてもOK、早期退職になってもOKだと私は思っています。企業のネームバリューだけで入社した結果、IBDが悪化して体調を崩したり、手術をすることになったら本末転倒です。
考えるに、「IBD患者さんの就労問題」は「小さい子どもを抱えたご家庭」と同じなのです。子どもの発熱で突発的に会社を休んだり、早退したりすることは多々あるからです。したがって、子どもを持つ社員の支援に力を入れている企業や、既に障害者を雇用しているような事業所では、IBD患者も働き続けやすいと考えられます。また、小規模で家族的な事業所のなかには就業規則にとらわれない会社もあります。未来志向と現実路線の谷間で葛藤はあるかも知れませんが、自らの病気と生活の幅を考えた選択をしましょう。

IBD患者という立場から

最後に、IBD患者である私からのアドバイスとして、日頃から状態が良いときほど少しはチャレンジすることをお勧めします。どこまでやれば自分の体調に影響するのかといった上限(頃合い)を知ることは、生活の質(QOL)を高めることに必ずつながるからです。 自分自身の取り扱い説明書を一度、作成してみてください。現状が見えてきて、どう対処すべきかを考える機会となるでしょう。

中山泰男(ナカヤマヤスオ)

17歳(高校2年生)でクローン病を発症。
2001年に「熊本クローンの会」を設立。2003年には「熊本IBD」と改名し、潰瘍性大腸炎患者の入会も促進。2006年には九州IBDフォーラムを設立、代表も務める。
現在は養護老人ホームの施設長として勤務しており、ライフワークとして、IBD患者の就労問題をはじめとした社会運動に取り組んでいる。趣味はツーリングと全国患者会めぐり。

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