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プロ野球選手 安達了一さん

2016年、潰瘍性大腸炎の診断を受けた安達氏。急激な体調悪化からの確定診断、入院、そしてリハビリの日々を支えてくれたのは、周りの人やファンの方々の熱いサポートだったと語る同氏に現在のお気持ちなどを伺いました。

「まさか、と思いました。まさか自分が」

安達了一さん

ー診断をうけたときのことを教えてください。

2016年1月、28歳の時でした。症状が現れ始めたのは、その少し前で、2015年シーズン後の秋季キャンプ中。トイレの回数が徐々に多くなっていって、トイレに行きながらトレーニングをこなしていました。もともとお腹が痛くなりやすい体質だったので、すぐには病院に行かなかったんです。でも、その状態が続いて、1日20~30回トイレに行くようになって。かかりつけの内科に行ったら「潰瘍性大腸炎かもしれない」と。すぐに大きな病院に行くよう言われました。

ー潰瘍性大腸炎のことはご存知でしたか?

知りませんでした。診断を聞いたときは、まさか、と思いました。まさか自分がそんな病気になるなんて。難病なんて、と。告知をされてから、病気のことや患者さんの人数などを調べましたね。気持ちの変化ですが…なったもんは仕方がないというか。深く考えすぎず、気持ちを切り替えていくようにしました。

「野球の大切さと、
初めて向き合えた気がする」

安達了一さん

安達了一さん

ー診断を受けてから、すぐ入院されたのですか?

そうですね。入院中は、もう野球ができないかもしれない、という不安はありました。そのときは症状も重かったし…。「潰瘍性大腸炎」という病名を聞いてから、難病ですし、このまま良くならないんじゃないかと怖かったです。1ヵ月ほど入院したんですが、こんなに長い間、野球をやらなかったことがなかったんですよ。小さいころから、ずっと野球をやってきたんで。離れてみて初めて、野球をしない人生なんて面白くない、と思いました。「野球をやりたい!」と。一番、野球に向き合えた時期だったと思います。焦りはありましたが、このときの「とにかくやりたい!」という気持ちが、その後を支えてくれましたね。

ーチームメイトのみなさんは、どんな反応でしたか?

入院したとき、チームメイトからは「待ってるから」と。それを聞いて、頑張ろうと思えました。復帰後は、監督やコーチ、そしてトレーナーと、周りの方々が気にかけてくれて。「今日は大丈夫か?」と毎日聞いてくれました。そのときは正直に答えてました。「ちょっとつらいんで、休みます」とか。声をかけてくれたおかげで、やりやすかったですね。病状なども相談しやすかったです。

ーファンの方々からもエールがいっぱい届いたそうですね。

そうですね。公表した後、ファンレターをたくさんいただきました。同じ病気の方からアドバイスや食事の本をいただいたり。いろいろな人が支えてくれてうれしかったです。

ー復帰された時のお気持ちを聞かせてください。

復帰して1軍に召集され球場で打席に立った時は、心から「楽しい!」と感じました。召集を受けたときは「やるぞ!」という気持ちでした。病気を経て、野球の大切さに改めて気づけたからだと思います。最高に楽しかった。改めて自分には野球しかないと実感しました。実はその後、オリックス・バファローズ育成枠の中道選手も潰瘍性大腸炎になったと聞いて。「マジか!」と驚いてしまいました。中道選手と直接会ったことはなかったんですが、一言伝えたい、力になりたいとTwitterで思わずメッセージを送りました。もし彼から病気のことについて何か聞かれたら、アドバイスをしたいなと思っています。まずは病気に負けないでほしいと伝えたいですね。

「応援は、一番の力になる」

安達了一さん

ー周りの人のサポートはありますか?

奥さんが、入院しているときも毎日面会に来てくれてうれしかったです。これまでと変わらずに接してくれたんですよね。おかげで、普通に生活できてうれしかった。彼女がいてくれるだけで、ほっとしました。退院してから、食生活を変えたんですよ。キノコ類など消化に悪いものは食べないようにしたり、生ものなどもやめたり。医師やファンの方からいただいた本を見て、勉強して。それを見て奥さんもいろいろ考えてやってくれている。奥さんのつくるごはんは、全部おいしいです

ーファンの応援も力になったと伺っています。

病気になってから、患者さんからファンレターをもらうことが増えました。「安達選手が頑張ってるから自分も頑張ります」という言葉に、どれほど勇気づけられたか。「安達選手がいないとダメなんで、早く戻ってきて」とか、うれしくて…。周りの人から、自分はこんなに応援されているんだ、と初めて思えたんです。ここまで頑張れたのは、みなさんの応援のおかげです。

ーこうしてグラウンドから見ると、観客席との距離が近いですね。

そうなんです(笑)。試合中、観客席にいる人の顔も結構わかりますよ。応援って、選手にはちゃんと聞こえるんです。復帰して、一番最初にグラウンドに立った時は思わず泣きそうになりました。みんなの声が届いて、顔を見て。昨年、自己最高の成績を残せたのも、応援のおかげです。ファンレターも、全部取ってあります。これからもずっと、捨てられないですよ。

若い患者さんへメッセージ

最初は不安だと思います。僕自身は、「治る!」という強い気持ちがあればよくなると信じています。周りにもサポートしてくれる人がたくさんいると思うので、周りの人たちのために頑張っていってください。「安達選手が頑張ってるから」とみなさんの勇気になれるように、僕も頑張ります。
今後の僕の目標ですが、まずは、オリックスという球団をもっと全国に広めたい。優勝して、TVや新聞で取り上げてもらえるようになったらいいなと考えています。今はちょっと、物足りないですからね(笑)。僕が活躍したら、メディアでも取り上げられると思うので、そうしたらもっと、同じ病気の患者さんへの応援になるのかなと。僕も頑張ります。一緒に頑張りましょう!
安達了一さん

安達了一(アダチ リョウイチ)

プロ野球選手

1988年1月7日生まれ

群馬県高崎市出身のプロ野球選手(内野手)。右投右打。2012年にドラフト1位指名で入団以来、オリックス・バファローズに所属。抜群の守備センスでチームをサポートする不動の遊撃手。2016年1月、潰瘍性大腸炎で緊急入院。リハビリを重ね、復帰後は前年に続いて正遊撃手に定着。2016年7月には、月間通算の安打数30安打と打率がいずれもパ・リーグで最高だったことから、自身初のリーグ月間MVPを受賞した。現在はIBD患者さんを勇気づけたいとSNSを中心に積極的に疾患啓発活動を行っている。

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