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熊本IBD会長・中山泰男さん

近年、日本では相次いで大きな自然災害が起こっており、日ごろからの備えの必要性が高まっています。IBD患者さんはどのような点を考慮して準備をすればよいのでしょうか。
2016年の熊本地震をIBD患者として被災した経験を持つ熊本IBD会長・中山泰男さんに、災害時の課題と必要な備えについてアドバイスをいただきました。

熊本地震の概要

熊本地震の概要
2016年4月14日21時26分、熊本県益城町で震度7、マグニチュード6.5の前震が発生し、翌々日の16日1時 25分に震度7、マグニチュード7.3の本震が連続して発生しました。益城町は布田川断層帯(活断層)上にあることから甚大な被害を受け、同断層帯の端に位置する南阿蘇村においても全ての進入路が崩壊し、ライフライン や道路等の復旧作業が長期化しました。一方、熊本市中心部は断層帯から少しばかり離れていたため、壊滅的な被害は免れましたが(一部地域を除く)、生活面への影響が長期化しました。
熊本地震は、本震のあった16日だけで余震が1,223回も発生し、10月末までで余震の回数が合計4,000回以上と観測史上最大級の地震であり、1年経った現在でも各所に影響を及ぼしています。

※気象庁:平成28年(2016年)熊本地震の関連情報
(http://www.jma.go.jp/jma/menu/h28_kumamoto_jishin_menu.html)(2017年4月5日アクセス)

避難生活で体験したこと

熊本地震で被災した私たちIBD患者にとって、第一の課題は水の確保でした。とにかく断水のため水洗トイレはなく、洗濯もできません。加えて、道路も地割れや陥没で寸断され、外部からの支援物資も届き難いといった状態が続きました。私が訪れた一次避難所では、避難者に配られた水はペットボトル500mlが1日1本のみでした。この1本でお尻の洗浄、服薬、栄養剤の補給の全てを賄わなければなりません。水の必要性を訴えたものの、IBD患者は見た目には普通ですし、高齢者世帯、母子世帯、要介護者、障がい者、持病のある方など全員が大変な状況にあるのだから条件は同じだと説明を受けました。
第二の課題は、通院と薬の確保でした。病院の建物や医療関係者も被災し、開院できない状態にありました。加えて、地震の混乱で主治医と連絡も取れず、調剤薬局等も被災して閉鎖していました。とにかく途方にくれたことを覚えています。
第三の課題は、避難生活(車中泊を含む)の長期化です。家族のことや仕事への復帰に対する不安、復旧作業や共同作業との両立などで心身ともに疲れ果ててしまい、病気にも影響を及ぼしかねません。
避難生活を送るにあたり、IBD患者の考え方によって待遇が大きく異なることを目の当たりにしました。それは、病気の事実を開示している方と、内緒で暮らしてきた方の違いです。病気について開示されている方の場合は、事情を知る方のつてで物資や情報を受けやすかったり、他の自治体の病院から薬を手配してもらえたりと、直接的な支援を受けやすいことがわかりました。病気のことを知られたくないという気持ちもわかりますが、万が一に備えて地域民生委員や自治会長には病気について知らせておいた方がよいのではないでしょうか。

私たちが災害に備えて準備すべきこと

私たちが災害に備えて準備すべきこと
熊本地震で被災した経験から、私たちIBD患者が災害時に備えて平時に準備すべきことを例示します。あくまでもこれは一例ですので、住所地の社会資源や交通事情、各人の事情によって異なることをご理解いただいたうえで、参考にしてください。

1.自分でできること【自助】

  • ・非常用避難袋(食料3日分、乾電池、保温シート等)の準備
  • ・水がなくても飲める常備薬(ジェル状の補助用品など含む)1週間分
  • ・生活用水の確保(水の入った2リットルのペットボトルをトイレに置いておく)
  • ・食料関係はできるだけ持って避難すること
  • ・生活圏域(日常生活を営んでいる地域)を越えた医療機関や調剤薬局を知っておくこと
  • ・避難先(身を寄せられる場所)を持っておくこと
  • ・排泄物を瞬時に固める薬品やおしりを洗浄する簡易ビデを準備しておくこと

2.地域の中で暮らし続けるために【共助】

  • ・地域民生委員や自治会長への必要最低限の情報開示
    (難病患者として、大量に水分を必要とすることの証明者の確保)
  • ・避難所の備蓄品で自分に足りないものがないかを事前に把握しておくこと
  • ・ひとりの社会人として、地域活動にできる範囲で参加すること

3.患者仲間とつながるために【互助】

  • ・患者団体に入り、支援要請の体制を図ること
  • ・難病患者固有の課題を網羅した自治体ガイドラインの作成を求めること

4.社会的な支援を受けるために【公助】

  • ・避難行動要支援者(旧災害時要援護者のこと)として自治体へ登録
  • ・自治体の担当者(保健師や福祉係)とつながりを持っておくこと
  • ・当事者団体として緊急時マニュアル(難病者向け)の整備を求めること

中山泰男(ナカヤマヤスオ)

17歳(高校2年生)でクローン病を発症。
2001年に「熊本クローンの会」を設立。2003年には「熊本IBD」と改名し、潰瘍性大腸炎患者の入会も促進。2006年には九州IBDフォーラムを設立、代表も務める。
現在は養護老人ホームの施設長として勤務しており、ライフワークとして、IBD患者の就労問題をはじめとした社会運動に取り組んでいる。趣味はツーリングと全国患者会めぐり。