1.クローン病
(Crohn's disease:CD)とは

監修:東京医科歯科大学 消化器内科 准教授 長堀正和 先生

クローン病は炎症性腸疾患のひとつで、主に小腸や大腸などの消化管に炎症が起きることによりびらんや潰瘍ができる原因不明の慢性の病気です。主な症状としては、腹痛、下痢、血便、発熱、肛門付近の痛みや腫れ、体重減少などがあります。また、さまざまな合併症が発現することがあります。
クローン病は、厚生労働省から難病に指定されていますが、適切な治療をして症状を抑えることができれば、健康な人とほとんど変わらない日常生活を続けることが可能です。

コラム

難病指定=命に関わる病気!?

難病というと、命に関わる病気、ふつうの社会生活が営めなくなる病気というイメージがありますが、クローン病は、根治に至る治療のない病気ではあっても、ただちに命に関わる病気ではありません。難病に指定されている理由には、原因が不明であるということのほかに、国が支援して原因や病態を解明し、治療体系を確立しようという狙いがあるからです。第34代米国大統領だったアイゼンハワーもこの病気に悩まされましたが、80歳近くまで長生きしました。

1.1 炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease: IBD)とは

私たちの体には免疫系という防御システムが備わっていて、ウイルスや細菌などの異物の存在を察知すると体内から追い出そうと活動します。このときに腫れや痛み、発熱などの反応が起こります。この反応のことを「炎症」と呼んでいます。
炎症は体にとって不可欠なものですが、過剰に起こると体を傷つけることになります。炎症が消化管に起こる病気を総称して「炎症性腸疾患」といいます。

炎症性腸疾患のうち、細菌や薬剤などはっきりした原因で起こるものを特異的炎症性腸疾患といいます。感染性腸炎、抗生物質等の薬剤で起こる薬剤性腸炎、虚血性腸炎、腸結核などは特異的炎症性腸疾患です。炎症を起こす原因がはっきりしている場合には、原因を取り除く治療を行います。
しかし、炎症性腸疾患のなかには、原因がわからない非特異的炎症性腸疾患もあります。クローン病はそのひとつで、1932年にニューヨークのマウントサイナイ病院のブリル・バーナード・クローン医師らによって初めて報告されました。「クローン病」とは、この医師の名前から付けられた病名です。
クローン病と似た病気で同じく非特異的炎症性腸疾患に属するものに、潰瘍性大腸炎があります。クローン病は口腔から肛門まで消化管のどの部位にも炎症が起こる可能性があるのに対して、潰瘍性大腸炎は炎症の部位が大腸に限局しているのが特徴です。

炎症性腸疾患の分類

炎症性腸疾患の分類

日比紀文ほか編:IBDを日常診療で診る, p24, 羊土社, 2017より作図

1.2 患者数の推移と 患者の分布

クローン病は、以前はまれな疾患とされていましたが、年々増加し続け、平成26年度は日本で約4万人の患者さんが登録されています。患者数が急増した背景には、内視鏡による診断法が向上したことや、この疾患に対する認知度が向上したことも関係していると思われますが、食事を含む生活習慣の西洋化の影響も大きいと考えられています。

クローン病医療受給者証・登録者証交付件数の推移

クローン病医療受給者証・登録者証交付件数の推移

厚生労働省:衛生行政報告書例の概況(http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/36-19a.html)(2017年3月6日アクセス)

発症時期は10~20代が多く、男性で20~24歳、女性で15~19歳が最も多くなっています。2:1の割合で男性の方に多くみられます。

クローン病の推定発症年齢

クローン病の推定発症年齢

難病情報センター:クローン病(http://www.nanbyou.or.jp/entry/81)(2017年3月6日アクセス)

1.3 診断、病像と病変のできる部位

クローン病の診断

クローン病の診断では、内視鏡検査やX線造影検査、病理組織検査などを行います。特に内視鏡像で下記のような潰瘍がみられることが特徴です。

クローン病の病像

クローン病では、縦方向に走る長い潰瘍(縦走潰瘍)、潰瘍によって囲まれた粘膜が盛り上がり、丸い石を敷いたようにみえる状態(敷石像)、腸の粘膜に、口内炎のような浅い潰瘍(アフタ)、形が整っていない潰瘍(不整形潰瘍)が現れます。

  • (1)縦走潰瘍
  • (2)敷石像
  • (3)アフタ
  • (4)不整形潰瘍
  • (1)(2)NPO法人日本炎症性腸疾患協会(CCFJ)編:クローン病の診療ガイド 第2版, p18, 文光堂, 2016
  • (3)(4)日比紀文ほか編:IBDを日常診療で診る, p68, 羊土社, 2017

病変のできる部位

クローン病には、病変のできる部位によって異なる病型があります。主に小腸にできる小腸型、小腸と大腸にできる小腸・大腸型、主に大腸にできる大腸型の3つに分類されており、それぞれ症状と治療法が異なります。最もよく病変ができる部位は、回腸(小腸の最後の部分)と大腸ですが、腸以外でも、口から肛門に至る消化管のどの部分にも起こる可能性があります。炎症・潰瘍が飛び飛びにできることが特徴です。

クローン病の病変部位による分類

クローン病の病変部位による分類

難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班(鈴木斑):クローン病の皆さんへ 知っておきたい治療に必要な基礎知識
(ibdjapan.org/patient/pdf/02.pdf)(2017年3月6日アクセス)

1.4 主な症状と合併症、経過と予後

主な症状

クローン病の症状は患者さんによってさまざまで、病気の状態によっても変わります。初期症状で最も多いのは下痢と腹痛で、半数以上の患者さんにみられます。さらに、血便、体重減少、発熱、肛門の異常(切れ痔や肛門の潰瘍、肛門の周囲に膿がたまるなど)が現れることもあります。

合併症

クローン病の炎症は浅い粘膜から始まり、深い粘膜へと進行します。腸管壁の深くまで炎症が進行すると、腸にさまざまな合併症(腸管合併症)が起こることがあります。そのほか、腸以外の全身に合併症(腸管外合併症)が起こることもあります。

腸管合併症としては、狭窄<きょうさく>(炎症を繰り返すことで腸管の内腔が狭くなる)、穿孔<せんこう>(深い潰瘍ができて腸に穴が開く)、瘻孔<ろうこう>(腸どうし、あるいは腸と他の臓器や皮膚がつながる)、膿腫<のうしゅ>(膿がたまる)などのほか、まれに大量の出血、大腸・肛門癌がみられます。

クローン病の腸管合併症

クローン病の腸管合併症

日比紀文監修:チーム医療につなげる!IBD診療ビジュアルテキスト, p59, 羊土社, 2016より作図

腸管外の合併症としては、関節、皮膚や眼の病変などがあります。関節の病変は30%以上の患者さんに、皮膚の病変は2%程度の患者さんに、眼の病変は1~2%の患者さんにみられます。そのほかにも、アフタ性口内炎、肝胆道系障害、結節性紅斑などがみられることがあります。

クローン病の腸管外合併症

クローン病の腸管外合併症

日比紀文監修:チーム医療につなげる!IBD診療ビジュアルテキスト, p61, 羊土社, 2016

経過と予後

クローン病は、寛解(症状が落ち着いている状態)と再燃(症状が悪化している状態)を繰り返しながら慢性の経過をたどりますが、命に大きな影響を及ぼす疾患ではないと考えられています。