専門医が監修
クローン病は、小腸や大腸にびらんや潰瘍が生じることでさまざまな症状があらわれます。
- 症状は患者さんによってさまざま
- 落ち着いている状態と悪化している状態の繰り返し
- 合併症が起こる可能性も
- 診断は画像検査、病理組織検査などで行う
- 特徴的な4つのタイプの潰瘍
- 病変ができた場所によって異なる病型
目次
クローン病の症状は患者さんによってさまざま
クローン病の症状は、患者さんや病気の状態によってさまざまです。初期症状では下痢と腹痛が最も多く、半数以上の患者さんにみられます。さらに、血便、体重減少、発熱、肛門の異常(切れ痔や肛門の潰瘍、肛門の周囲に膿がたまるなど)があらわれることもあります。

どんな治療をするの?
クローン病の治療について正しく理解するために、薬物療法や栄養療法など、主な治療法の種類やその目的を分かりやすく解説しています。
クローン病は、症状が落ち着いている状態と悪化している状態の繰り返し
クローン病は、症状が落ち着いている状態(寛解期)と症状が悪化している状態(活動期)を繰り返しながら慢性の経過をたどります。経過中に腸管合併症が生じ手術が必要になることがあり、場合によっては再手術になることもあります。しかし、治療薬や診断技術が進歩したことで、長期予後が改善されています。
クローン病で起こるさまざまな合併症
クローン病の炎症は浅い粘膜から深い粘膜へと進行します。腸管壁の深くまで炎症が進行すると、腸にさまざまな合併症(腸管合併症)が起こることがあります。
腸管合併症としては、腸管の内腔が狭くなる(狭窄<きょうさく>)、腸に穴があく(穿孔<せんこう>)、腸どうし、あるいは腸と他の臓器や皮膚がつながる(瘻孔<ろうこう>)、膿がたまる(膿瘍<のうよう>)などのほか、まれに大量の出血がみられます。また、クローン病による炎症が長期間続くと、大腸・肛門や小腸にがんが発症するリスクが高くなるといわれています※、※※。
クローン病の腸管合併症

日比紀文監修:チーム医療につなげる!IBD診療ビジュアルテキスト. p59, 羊土社, 2016より作図
腸以外の全身に合併症(腸管外合併症)が起こることもあります。
腸管外合併症としては、関節痛が約40~50%、末梢関節炎は約10~20%にみられるほか、皮膚や眼の病変、アフタ性口内炎、肝胆道系障害(かんたんどうけいしょうがい)、結節性紅斑(けっせつせいこうはん)などの皮膚の合併症がみられることがあります※。
※ 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班):令和5年度分担研究報告書 潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針. 令和5年度改訂版
※※ 杉田昭ほか:日消誌. 110(3), 396-402, 2013
クローン病の腸管外合併症

日比紀文監修:チーム医療につなげる!IBD診療ビジュアルテキスト. p61, 羊土社, 2016
クローン病は、画像検査、病理組織検査などで診断
クローン病の診断は、自覚症状、身体の所見、血液検査、画像検査(内視鏡検査、X線造影検査など)などで行います。画像検査では、クローン病に特徴的なびらんや潰瘍の有無や炎症の程度を確認します。
クローン病でみられる4つのタイプの潰瘍
クローン病では、縦方向に走る長い潰瘍(縦走潰瘍<じゅうそうかいよう>)、潰瘍に囲まれた粘膜が盛り上がり丸い石を敷いたようにみえる状態(敷石像<しきいしぞう>)、腸の粘膜にみられる口内炎のような浅い潰瘍(アフタ)、形が整っていない潰瘍(不整形潰瘍<ふせいけいかいよう>)があらわれます。
病変部の写真を見る戻す
-
(1)縦走潰瘍
-
(2)敷石像
-
(3)アフタ
-
(4)不整形潰瘍
(1)(2)NPO法人日本炎症性腸疾患協会(CCFJ)編:クローン病の診療ガイド 第3版. p22, 文光堂, 2021
(3)(4)日比紀文ほか編:IBDを日常診療で診る. p68, 羊土社, 2017
病変のできた場所によって異なる病型
クローン病は病変が発生する場所によって大きく次の3つの病型に分けられます。
① 小腸型:病変が主に小腸に発生
② 小腸・大腸型:病変が小腸と大腸に発生
③ 大腸型:病変が主に大腸に発生
病変が最も多く発生する場所は、回腸(小腸の最後の部分)と大腸ですが、腸以外でも、口から肛門までのどの場所にも起こる可能性があります。また、炎症・潰瘍が飛び飛びにできることが特徴です。
クローン病の病変部位による分類

難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班(鈴木斑):クローン病の皆さんへ 知っておきたい治療に必要な基礎知識 第4版. 2020年3月改訂
(http://www.ibdjapan.org/patient/pdf/02.pdf)(2024年3月13日アクセス)