診断、病像と病変のできる部位
クローン病の診断
クローン病の診断では、内視鏡検査やX線造影検査、病理組織検査などを行います。特に内視鏡像で下記のような潰瘍がみられることが特徴です。
クローン病の病像
クローン病では、縦方向に走る長い潰瘍(縦走潰瘍)、潰瘍によって囲まれた粘膜が盛り上がり、丸い石を敷いたようにみえる状態(敷石像)、腸の粘膜に、口内炎のような浅い潰瘍(アフタ)、形が整っていない潰瘍(不整形潰瘍)が現れます。
- (1)(2)NPO法人日本炎症性腸疾患協会(CCFJ)編:クローン病の診療ガイド 第2版, p18, 文光堂, 2016
- (3)(4)日比紀文ほか編:IBDを日常診療で診る, p68, 羊土社, 2017
病変のできる部位
クローン病には、病変のできる部位によって異なる病型があります。主に小腸にできる小腸型、小腸と大腸にできる小腸・大腸型、主に大腸にできる大腸型の3つに分類されており、それぞれ症状と治療法が異なります。最もよく病変ができる部位は、回腸(小腸の最後の部分)と大腸ですが、腸以外でも、口から肛門に至る消化管のどの部分にも起こる可能性があります。炎症・潰瘍が飛び飛びにできることが特徴です。
クローン病の病変部位による分類
難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班(鈴木斑):クローン病の皆さんへ 知っておきたい治療に必要な基礎知識
(ibdjapan.org/patient/pdf/02.pdf)(2017年3月6日アクセス)
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主な症状と合併症、経過と予後
主な症状
クローン病の症状は患者さんによってさまざまで、病気の状態によっても変わります。初期症状で最も多いのは下痢と腹痛で、半数以上の患者さんにみられます。さらに、血便、体重減少、発熱、肛門の異常(切れ痔や肛門の潰瘍、肛門の周囲に膿がたまるなど)が現れることもあります。
合併症
クローン病の炎症は浅い粘膜から始まり、深い粘膜へと進行します。腸管壁の深くまで炎症が進行すると、腸にさまざまな合併症(腸管合併症)が起こることがあります。そのほか、腸以外の全身に合併症(腸管外合併症)が起こることもあります。
腸管合併症としては、狭窄<きょうさく>(炎症を繰り返すことで腸管の内腔が狭くなる)、穿孔<せんこう>(深い潰瘍ができて腸に穴が開く)、瘻孔<ろうこう>(腸どうし、あるいは腸と他の臓器や皮膚がつながる)、膿腫<のうしゅ>(膿がたまる)などのほか、まれに大量の出血、大腸・肛門癌がみられます。
クローン病の腸管合併症
日比紀文監修:チーム医療につなげる!IBD診療ビジュアルテキスト, p59, 羊土社, 2016より作図
腸管外の合併症としては、関節、皮膚や眼の病変などがあります。関節の病変は30%以上の患者さんに、皮膚の病変は2%程度の患者さんに、眼の病変は1~2%の患者さんにみられます。そのほかにも、アフタ性口内炎、肝胆道系障害、結節性紅斑などがみられることがあります。
クローン病の腸管外合併症
日比紀文監修:チーム医療につなげる!IBD診療ビジュアルテキスト, p61, 羊土社, 2016
経過と予後
クローン病は、寛解(症状が落ち着いている状態)と再燃(症状が悪化している状態)を繰り返しながら慢性の経過をたどりますが、命に大きな影響を及ぼす疾患ではないと考えられています。