専門医が監修
潰瘍性大腸炎は、大腸に粘膜のびらんや潰瘍が生じることでさまざまな症状があらわれます。
潰瘍性大腸炎の主な症状は下痢や血便で、腸や全身の合併症を伴う場合も
潰瘍性大腸炎の主な症状は、下痢や血便で、腹痛を伴うこともあります。重症になると発熱、体重減少、貧血などの全身の症状が起こります。
激しい炎症が続いたり、炎症が腸管壁の深くまで進行したりすると、腸や腸以外の全身に合併症が起こることもあります。潰瘍性大腸炎の患者さん個々によって症状の程度は異なりますが、潰瘍性大腸炎は一般的に症状が悪化している状態(活動期)と症状が落ち着いている状態(寛解期)を繰り返すとされています。
寛解期を長く維持することが治療の目標となります。

どんな治療をするの?
潰瘍性大腸炎の治療について正しく理解するため、薬物療法や外科的治療など主な治療法の種類やその目的を分かりやすく解説しています。
潰瘍性大腸炎で起こるさまざまな合併症
腸に起こるさまざまな合併症(腸管合併症)として、大量出血、腸管の内腔が狭くなる(狭窄<きょうさく>)、腸に穴があく(穿孔<せんこう>)などがあります。また、強い炎症により腸管の運動が低下します。これにより大腸にガスや毒素が溜まって膨張し、発熱や頻脈などの中毒症状があらわれ、緊急手術を必要とすることがあります(中毒性巨大結腸症<ちゅうどくせいきょだいけっちょうしょう>)。また、潰瘍性大腸炎による炎症が長期間続くと、がん化するリスクが高くなるといわれています※。
※ NPO法人日本炎症性腸疾患協会(CCFJ)編:潰瘍性大腸炎の診療ガイド 第4版. p13, 63, 68, 文光堂, 2021
潰瘍性大腸炎の累積大腸がん発生率*

Eaden JA, et al.: Gut 48(4), 526-535, 2001
* 潰瘍性大腸炎診断後の特定の経過年数までに大腸がんを発症するおおよその割合
腸以外の全身に合併症(腸管外合併症)が起こることもあります。
腸管外合併症としては、関節痛は約40~50%、末梢関節炎は約10~20%にみられるほか、皮膚や眼の病変、アフタ性口内炎、肝胆道系障害(かんたんどうけいしょうがい)、結節性紅斑(けっせつせいこうはん)などの皮膚の合併症がみられることがあります※。
※ 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班):令和5年度分担研究報告書 潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針. 令和5年度改訂版
潰瘍性大腸炎の腸管外合併症

日比紀文監修:チーム医療につなげる!IBD診療ビジュアルテキスト. p61, 羊土社, 2016
潰瘍性大腸炎は、画像検査、病理組織などで診断
潰瘍性大腸炎の診断は、自覚症状、身体の所見、血液検査、画像検査(内視鏡検査など)などで行います。画像検査では、以下のような潰瘍性大腸炎に特徴的なびらんや潰瘍の有無、炎症の程度を確認します。通常、病変は粘膜の表層に限られます。
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(1)正常
血便なし
粘膜正常 -
(2)軽度
わずかに便に
血液が付着
粘膜はやや赤く、
顆粒状 -
(3)中等度
排便時にほぼ出血あり
粘膜が赤く腫れている -
(4)強度
著明な血便
自然出血や潰瘍が多数
Schroeder KW, et al.: N Engl J Med. 317(26), 1625-1629, 1987
NPO法人日本炎症性腸疾患協会(CCFJ)編:潰瘍性大腸炎の診療ガイド 第4版. p18, 文光堂, 2021
潰瘍性大腸炎の炎症の広がり方と3つのタイプ
潰瘍性大腸炎は、基本的には直腸から病変が生じ、連続的に上(口側)へと広がっていきます。病変の広がり方は、大きく次の3つに分けられます。
①直腸炎型:炎症が直腸だけに限られているもの
②左側大腸炎型:炎症が脾彎曲部<ひわんきょくぶ>を越えていないもの
③全大腸炎型:炎症が大腸全体に広がっているもの
潰瘍性大腸炎の病変の広がりによる分類

難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班(鈴木斑):潰瘍性大腸炎の皆さんへ 知っておきたい治療に必要な基礎知識 第4版. 2020年3月改訂(http://www.ibdjapan.org/patient/pdf/01.pdf)(2024年3月13日アクセス)