診断、病像と病変のできる部位
潰瘍性大腸炎の診断
潰瘍性大腸炎の診断では、内視鏡検査やX線造影検査、病理組織検査などを行います。特に内視鏡像で、大腸の粘膜に下記のようなびらんや潰瘍がみられることが特徴です。
潰瘍性大腸炎の病像
潰瘍性大腸炎では、大腸の粘膜に炎症が起き、びらんや潰瘍が発生します。通常、病変は、粘膜層~粘膜下層までの表層に限られます。
- (1)正常
血便なし
粘膜正常 - (2)軽度
わずかに便に血液が付着
粘膜はやや赤く、顆粒状 - (3)中等度
排便時にほぼ出血あり
粘膜が赤く腫れている - (4)強度
著明な血便
自然出血や潰瘍が多数
Schroeder KW, et al.:N Engl J Med 317(26), 1625-1629, 1987
NPO法人日本炎症性腸疾患協会(CCFJ)編:潰瘍性大腸炎の診療ガイド 第3版, p25, 文光堂, 2016
病変のできる部位
潰瘍性大腸炎は、基本的には直腸から始まり、連続的に上(口側)へと広がっていきますが、その広がり方は患者さんによって違い、次の3つに分けられます。
・直腸炎型:炎症が直腸だけに限局しているもの
・左側大腸炎型:炎症が脾彎曲部<ひわんきょくぶ>を超えていないもの
・全大腸炎型:炎症が大腸全体に広がっているもの
潰瘍性大腸炎の病変の広がりによる分類
難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班(鈴木斑):潰瘍性大腸炎の皆さんへ 知っておきたい治療に必要な基礎知識
(ibdjapan.org/patient/pdf/01.pdf)(2017年3月6日アクセス)
関連コンテンツ
主な症状と合併症、経過と予後
主な症状
下痢や血便が認められ、腹痛を伴うこともあります。重症になると発熱、体重減少、貧血などの全身の症状が起こります。
合併症
激しい炎症が続いたり、炎症が腸管壁の深くまで進行すると、腸にさまざまな合併症(腸管合併症)が起こることがあります。そのほか、腸以外の全身に合併症(腸管外合併症)が起こることもあります。
腸管合併症としては、大量出血、狭窄<きょうさく>(腸管の内腔が狭くなること)、穿孔<せんこう>(腸に穴があくこと)などがあります。また中毒性巨大結腸症といって、強い炎症のために腸管の運動が低下し、腸内にガスや毒素が溜まって大腸が膨張し、全身に発熱や頻脈などの中毒症状が現れることがあります。多くの場合は緊急手術を必要とします。また、長い期間が経過した潰瘍性大腸炎では、炎症が続いたことによりがん化するリスクが高くなると言われています。
腸管外の合併症としては、関節、皮膚や眼の病変などがあります。そのほかにも、アフタ性口内炎、肝胆道系障害、結節性紅斑などがみられることがあります。
潰瘍性大腸炎の予後
潰瘍性大腸炎は、寛解(症状が落ち着いている状態)と再燃(症状が悪化している状態)を繰り返しながら慢性の経過をたどります。
発病後長期経過すると大腸がんを発症するリスクが高まることが知られています。特に10年以上経過した全大腸炎型に発がんリスクが高いことが知られており、定期的な内視鏡検査によって早期発見することが重要になります。直腸炎型の発がんリスクは一般人口とほぼ同じです。
潰瘍性大腸炎の累積大腸癌発生率
Eaden JA, et al.:Gut 48(4), 526-535, 2001